「遠い山なみの光」

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2017年ノーベル文学賞作家、カズオ・イシグロさんの本の題名です。
彼は、1960年5歳の時に日本人の両親と英国に移り住む。
サリー州ギルフォードという町だったそうだ。これはまだ見ぬ日本を想像しての24歳の時の小説。

舞台は戦後間もない長崎、原爆投下から復興へ目指して少しづつ変わろうとしている。
主人公は悦子という女性、今はロンドンに住んでいるが、昔のことを思い返している。
小説の語り部となって、あてにならないアメリカ男に未来を託そうとしている友人の女性、佐知子とその子供を見ているという物語です。
昔ながらの厳格な父親や夫、それに翻弄される女性、戦争で日本が負け、良くも悪くも 社会が大きくパラダイムチェンジしつつある中、自力では生きていけない母子、それを見つめる悦子。
なにを頼りどう生きていくか懸命に、考え、、わずかな光を求めて生きるさまが描かれています。

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力強い描写ではなく、悦子と佐知子親子の普段の会話を通じて、淡々と描写している。
まるで、この作者がインタビューに答えているときのように、冷静に淡々と。
時々、場面と時間が切り替わり、主人公のロンドンの現在の様子が語られます。
この母子の物語と今はロンドンにいる主人公(悦子)の物語とこの作者自身の物語が次第にシンクロしてくる不思議な構成になっている。

原作名は A Pale View of Hills です。 長崎の稲佐山からの眺めの事でしょう。
主人公とこの母子がケーブルカーと徒歩でこの山をおとずれ、はるか眼下に広がる長崎の街並みを眺めます。

悦子:「あの辺りはみんな原爆でめちゃめちゃになったのよ、それが今はどう」と笑顔で話します。
佐知子:「今日はとても元気ね、悦子さん」
この短い会話から、
山からの眺めで、過去と現在、見え ない自分の未来を眺めている、に違いない。
・・・自分の思いともリンクする場面がお気に入りです。
写真はいつの裏山からの眺めですが、いつか稲佐山から長崎を眺めてみたいと。

2017年12月7日のアカデミー賞講演で作者が語った爐い弔かのささやかな発見瓩もしれません。
2017年7月9日 [記]

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