植物の生存戦略

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秋を真っ先に”匂い”で感じさせてくるのは、キンモクセイ。 中国原産で観賞用に江戸時代に日本に輸入された。
オリーブ目なので、葉っぱも匂いもなんとなく似ているが、匂いはとにかく印象的。 なぜ、そんなに”匂う”のか? それも湿度が高いと匂いが強いらしい?
そこには、おそるべき植物の生存戦略が隠れている。
 

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そもそも植物はもちろん、生物の最大の使命は、「子孫を残す」こと。
動物と違って植物は、動くことができない。 そんな環境の中でどうやって「子孫を残す」のか…
まさに植物にとっての死活問題であり、生存している植物の種は 試行錯誤を繰り返して、それぞれの戦略をとっている。 

動けない植物が「移動」できる唯一最大のチャンスは種子の時代。
風を使い、重力を使い、水流を使い、虫を使い…あらゆる方策で種子を作り育て運ぶ。
そこには植物のしたかたな戦略を見ることができる。

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植物が種子を造りには養分が必要、養分は光合成によって自ら作る。 これはこれですごい。 
光合成には、太陽の光が必要となり、木々は光を求めて、高く広く枝をはり葉っぱを広げる。

写真は福井の赤兔山のブナ林、新緑がまぶしい季節に歩いた。
見上げれば 青い空の面積が少ない。 
葉っぱが我さきに広がって、太陽の光を求めるからだ。
ところが、これは無秩序ではない。 葉っぱが重なると、日の当たらない葉っぱは葉柄(葉の元)の角度を変えて太陽の光を受けれる位置に角度を変える!(葉っぱの屈光率)
樹木の上部でも、葉っぱの戦術があるわけです。 

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視点を植物が生存する場所に変えてみる。
高山植物の代表格のコマクサ。

写真は夏の天狗岳で、ぜいぜい苦しい時に、ふと目にした。いっぷくの癒しの花。
"女王”と呼ばれるこの草は、不安定な地盤の砂礫地で生きている。
もっと土壌が豊かな場所は高山でもあるだろうに、あえてこんな場所をこの植物は選んだ。
ほかの草木が極端にすくないこんな場所、競争がほとんどないこの世界。
その為に、深く根を張ることができ、水分は霧でも葉っぱで捉える。 不安定な場所でも生きていける。そんな道を選んだ。



さて、最初のキンモクセイに戻ろう。
花が匂うのは、もちろん生存戦略の為。
あの匂いは、アブの一種である「ホソヒラタアブ」が好むらしい。
キンモクセイは、このアブを独占する戦略なのだ。
匂いは湿度の高いタイミング、夜とか雨の前後。
ヒラタアブは、秋が繁殖期で夜が活動的になるらしい…まさにキンモクセイはこれを狙っている!?
  ここまで、ピンポイントで戦略を練っているとすると、そら恐ろしい。

ここからは個人的な(たのしい)想像です。
実は、この樹木 雌雄異株で、日本には雄株(オス)しか居ません。
花付きがよく匂いが豊かなのが雄株なので、中国からの輸入は雄株だけだったとのこと。
日本のキンモクセイは元来上述のような戦略を練っていますが、実は日本ではその戦略では実ができない=子孫を残せない。
現実の繁殖は人力で挿し木で簡単に増せる。 子孫繁栄には一見問題がなさそうですが…
実は挿し木は、遺伝子が同じものつまりクローンを増やしているに過ぎない。 この遺伝子に悪影響を及ぼす病害が発生すると、その主が絶滅する恐れがあるのです。
本来の植物は、雄株と雌株が、雄花と雌花が、違う遺伝子の融合が主の多様性がうまれ、環境への対応が可能となる。 
将来のリスクを回避して、キンモクセイを存続させるには、雌株を広めるか… はたまたキンモクセイが単一遺伝子ながら何らかの進化を遂げるかの戦略をとらねばなりません。

今、キンモクセイは自分で雌株は輸入出来ません。できるのは自分の変化です。
…雄株専門から、雌花か雌株をいつか発生させるのでないか。 
オスしかいない世界はおかしい…すでに200年 日本のキンモクセイはそんな世界で生きている。
動物と同じで、遺伝子が「メスがいないとさみしい」とおもっているに違いない。
動物でもオスからメスに変換するものがいますが、そろそろキンモクセイもこれを狙っているのではないか。
生物とは、子孫繁栄の為なら どんな戦略でも取れる、進化ができる。 

そんなマニアックな思いに浸りながら、めくるめく植物生存戦略の世界を(=キンモクセイの匂いを)楽しんでいます。(笑)


2016年10月23日 [記]

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